野球

内海哲也の人的補償に隠された物語とは?原辰徳が描いた究極のシナリオ

2018年末、巨人ファンを襲った衝撃

「内海だってありえるよ。技術と経験がある。多和田も、今井も、榎田もいるし。高橋光成だって。あとはルーキーですね、松本」1月7日に佐賀市内で行われた、後援会主催の新春パーティーの席での辻監督の発言である。

FAで西武から巨人に移籍した炭谷銀仁朗捕手の人的補償選手の発表に際し、球界に衝撃が走ったのが昨年末のことだった。巨人一筋15年、生え抜きのサウスポーとして通算133勝を記録しているサウスポーが、28人のプロテクトリストから外れ、人的補償として西武へ移籍することが発表されたのだった。

内海は2003年の自由獲得枠で巨人に入団。2年目の2005年からローテを担うと、3年目の2006年には初の2桁勝利となる12勝をマーク。そこから3年連続2桁勝利をマークし、2010年からは4年連続2桁勝利、2011年と2012年には2年連続最多勝に輝いた実績の持ち主であり、巨人にとっては阿部慎之助に続く功労者と言って差し支えない存在である。

その功労者があっさりと他球団に移籍してしまったことについては「内海がいなくなるなんて…このオフは大型補強したけど喜びが吹っ飛んだ」「巨人ファンを続けられないかも…人的補償で出すなんてひどすぎる」と悲痛な叫びがSNSに殺到した。

巨人は昨年秋の政権交代でGM職を廃し、原辰徳新監督が編成面も取り仕切る“全権監督”に。その原監督によるドライな人事との見方がネット上でも大半を占めているのだが、果たして本当にそうなのだろうか?第一回の「プロ野球ほんのちょっと妄想遊戯」では、内海哲也のプロテクト外しに秘められた物語を妄想していくこととする。

顕著となりつつある近代スポーツ科学の進化

少し話を競馬界に移してみることとしよう。昨年末に行われた平成最後のグランプリ競争「第63回有馬記念」では、池添謙一騎手騎乗のブラストワンピースが優勝をした。このブラストワンピース、桜花賞、オークス、秋華賞の牝馬3冠と海外馬を含む古馬と戦うジャパン・カップにも勝利するGI4勝を挙げたアーモンドアイ、マイルチャンピオンシップで古馬を蹴散らしたステルヴィオやダートのチャンピオンカップを制したルヴァンスレーヴと同じく3歳馬であった。

実は、その一方で高齢馬の活躍も見逃せないものとなっているというから面白い。若駒の台頭によりG1戦線における高齢馬の活躍自体は厳しくなってきてはいるが、7歳や8歳という高齢馬がまだまだ現役競走馬としてターフを盛り上げているのである。

そして競馬界と同じようなことが、野球界においても起こっている。近年では高校球児が150kmを投げることがそれほど珍しいことではなくなってきており、大谷翔平選手が高校時代に160kmを記録したのは記憶に新しいところ。昨年のドラフトで4球団の競合の末に中日ドラゴンズへ入団をした根尾昴選手に至っては、中学校時代に146kmを記録している始末である。

その一方で、高齢選手の活躍も見逃すことができない。元中日ドラゴンズの山本昌投手の「50歳まで現役」は少し異常な数字だったとは思うが、今シーズン現役を迎える選手の中にも、上原浩治選手と福浦和也選手の43歳、福留孝介選手の41歳を筆頭に多くのアラフォー選手が在籍をしている。

そして、これらスポーツ界に起こっている「若年期におけるパフォーマンスの向上」と「選手寿命のますますの延長」という現象は、近年におけるスポーツ科学の進化がもたらしたものであると考えて間違いないと思われる。これからの野球界に置いてもますますその傾向は顕著になってくるはずだ。

話しを内海投手に戻してみると、この話しの流れで言えば内海投手に至ってはまだまだ数年の活躍が可能な36歳という年齢である。もちろん、選手としてのピークは過ぎてしまったかも知れないが、まだまだ現役を続け、ひと花もふた花も咲かすことができる可能性は十二分にある。それにも関わらず、巨人は内海投手をプロテクトリストから外し、西武への移籍を許してしまった。それは何故なのだろう。

二極化の中でのチーム作りが行き着く先とは

例えば高卒の若い選手が、プロの世界で数年やった選手とそれほど変わらないパフォーマンスを発揮できてしまう世界が近い将来やってくるとしよう。一方で、長いプロ野球生活において一流の成績をあげたベテラン選手が、その現役生活を今まで以上に長く送れるようにもなっていく・・。巨人で言えば、坂本選手や岡本選手の台頭と阿部選手と上原選手の現役続行のような現象が至る所で起こっていくようなイメージである。

若い選手とベテラン選手の活躍が「バランスよく」融合するのに越したことはないと思うが、試合に出られる選手、ベンチ入りできる選手、一軍に登録できる選手、それらの数には限りがある以上、全ての選手が日の目を見れるわけではない。というよりは、ほとんどの選手が試合に出たくても出られないというのが現実である。

そのような現実を踏まえた上で、若手選手の育成とベテラン選手の活躍の場を用意していかなければならないのが、今のプロ野球界で現場を切り盛りする監督やコーチの苦悩である。原監督に至っては全権監督という肩書きまで付いてきてしまっているのだから、その心中察するに余り有る。

そしてそのような活躍選手の若年化と高齢化という二極化が進む中で、原監督が選んだ道はできる限り若い力の台頭を促していくチーム作りである。その意志が見て取れるのが昨年行われたドラフトであり、抽選は外してしまったが、一位指名に大阪桐蔭の根尾昴選手を指名したのに始まり、終わってみればドラフト2位〜6位の5選手は全て高校生、育成で指名した4選手も全て高校生なのである。「これからはヤングジャイアンツでいくよ!」という原監督のメッセージだろう。

生え抜きの功労者だからこそのプロテクト外し

そのように若い力を中としたチーム作りを推し進めていく上で、その犠牲になってしまうのはベテラン選手ということになる。他のチームだったら活躍の場が与えられるかも知れない選手であればなおさら、今回の内海投手などはまさにこのパターンに当てはまる。

ここからは「ほんのちょっと妄想遊戯」にはなるが、恐らく昨シーズンの中盤以降、巨人の編成に対し、西武の編成から内海投手のトレードが持ちかけられていたのではないかと思う。同じセ・リーグからやってきた技巧派左腕である榎田投手の活躍に加え、エース菊池雄星投手のポスティングによるメジャー移籍を控えた西武にとってみれば、133勝の実績抜群なサウスポーが喉から手がてるぐらい欲しかったはずである。

しかしながら、巨人だってそう簡単に生え抜き選手を出せるわけがない。ましてや、シーズン中盤を終え優勝戦線から脱落してしまっている状況において、来期の監督構想もはっきりしない中、そんな重要な決断をできるはずもない。きっとその時点では、そんなトレード話は一笑に付されたのだと思う。

けれど、原全権監督の誕生により、風向きが大きく変わることになる。チームの状態と状況を確認し、これからの野球界の潮流を理解した上で、原監督は辻監督との会食をセッティングしたのである。そして、原監督は辻監督に次のような話を持ちかけたのだ。

「内海を西武ライオンズのローテションピッチャーとして使ってくれると約束してくれるのであれば、内海の野球人生の終盤を辻さんにお願いできないかと思っている。」

現役生活を巨人一筋で終えた原監督にとって、巨人という球団で野球人生をまっとうしたいという内海選手の気持ちは痛いほど分かっている。けれど、これからのチームと野球界を考えた時には、巨人における内海選手の活躍の場はそれほど多くはないだろう。それであれば、浅村選手が抜けるとはいえ球界屈指の強力打線である西武ライオンズで、一つでも多くの勝利を飾ってもらいたいと思うのが野球人としての愛である。原監督の熱い思いを辻監督も理解し、そして描かれた一枚の絵こそが、FAの人的補償による内海選手の移籍なのである。

巨人と西武の日本シリーズを夢見て

原監督にとって描いたシナリオにおける最悪の結末は、内海選手が活躍したにも関わらず、肝心の巨人の成績がパッとしなかった場合になるだろう。だからこそ、私は原監督の勇気ある決断を支持したいと考えている。

反対に最高の結末といえば、西武ライオンズで内海選手が一年間ローテーションを守りきり、原巨人は若手投手の活躍によって優勝を成し遂げることである。西武ライオンズがパ・リーグを制し、巨人との日本シリーズで内海選手が登板することになったりすれば、きっとこれは最高の結末になるだろう。

もうすぐ始まる巨人春季キャンプの一軍メンバーには、ドラフト一位の高橋優貴選手をはじめ、鍬原拓也選手や高田萌生、大江竜聖の名前が発表されている。彼らヤングジャイアンツがこのチャンスを掴み取り、大先輩である内海選手を超えるぐらいの活躍をした時こそ、原監督の全身全霊のグータッチが見られるのではないかと思う。そんな妄想を膨らませながら、シーズンの開幕を心待ちにしている。

See you next wild ideas・・